JAPAN SIDE

日本側で必要な手続き

マレーシアに法人をつくる・移住するとき、現地の手続きと同じくらい重要なのが日本側で何が起きるかです。当社は日本国内の窓口として、日本にお住まいの方・日本法人の方からご相談をお受けしています。ここでは、ご相談の前に知っておいていただきたい日本側の制度を、条文と公式資料に基づいて整理しました。

東京の街並み。海外に法人をつくる場合でも、日本側の制度の確認は日本国内で必要になる。

このページは制度の概要をご案内するものです。実際に適用されるかどうかは個別の事情により異なります。具体的な判断は税理士・所轄税務署にご確認ください。当社は税務代理・税務相談を行う事業者ではありません。記載は 2026-09-15 時点で確認した内容です。

RESIDENCY

1. まず「居住者かどうか」が決まる

日本の所得税では、居住者は「国内に住所を有し、又は現在まで引き続いて一年以上居所を有する個人」と定められています(所得税法2条1項3号)。非居住者はそれ以外です。

よくある誤解が「183日ルール」です。日本の所得税法に、滞在日数で居住者を判定する規定はありません。国税庁も次のように明示しています。

滞在日数のみによって判断するものでないことから、外国に1年の半分(183日)以上滞在している場合であっても、わが国の居住者となる場合があります。国税庁 タックスアンサー No.2012

判定の基準は「生活の本拠」がどこにあるかで、住居・職業・資産の所在・親族の居住状況などの客観的事実によって判断されます(所得税基本通達2-1)。なお「国外において、継続して一年以上居住することを通常必要とする職業を有すること」に該当する場合は、国内に住所を有しない者と推定されます(所得税法施行令15条)。

RESIDENCY TEST

  1. 国内に「住所」(生活の本拠)がありますか。

    ある居住者。住所は職業・家族の居住地・資産の所在などの客観的事実で判定されます。

    ない次の問いへ進みます。

  2. 現在まで引き続いて1年以上、国内に「居所」がありますか。

    ある居住者

    ない非居住者

この判定に日数の基準は登場しません。国内法に「183日ルール」はありません。

183日という数字は、租税条約の「短期滞在者免税」の要件として登場するもので、国内法の居住者判定とは別の話です。

EXIT TAX

2. 国外転出時課税(出国税)

一定の資産を持つ方が日本を出るとき、実際に売っていなくても含み益に課税される制度です(平成27年7月1日以後の国外転出に適用)。

対象になる方国外転出の時に対象資産の価額の合計が 1億円以上であり、かつ国外転出の日前10年以内に国内に住所または居所を有していた期間の合計が 5年を超える
対象資産有価証券(株式・投資信託など)、匿名組合契約の出資持分、未決済の信用取引・発行日取引・デリバティブ取引
申告期限納税管理人の届出をした場合は、その年分の確定申告期限まで。届出をしない場合は、国外転出の時までに準確定申告と納税が必要(所得税法127条1項
納税猶予担保の提供等の要件を満たす場合、国外転出の日から 5年間(延長の届出により最長10年間)猶予されます

WHO IS COVERED

条件 1 — 資産

国外転出の時に、対象資産の価額の合計が 1億円以上

かつ
条件 2 — 居住期間

国外転出の日前10年以内に、国内に住所または居所を有していた期間の合計が 5年を超える

両方に当てはまる方が対象です。片方だけでは対象になりません。

条文は「一億円未満である居住者については、適用しない」(所得税法60条の2第5項)と定めています。つまり、ちょうど1億円の場合は対象になります。居住期間は逆に「五年以下である居住者については、適用しない」ため、5年ちょうどは対象外です。同じ「しきい値」でも語尾によって扱いが変わります。

納税猶予を受けた場合、猶予は自動では続きません。各年の12月31日時点で所有している資産について「継続適用届出書」を翌年3月15日までに提出する必要があり、提出がないと、その期限から4か月を経過する日で猶予期限が確定します。

CFC

3. 外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制)

海外子会社の所得を日本側の所得に合算して課税する制度です。法人税率の低い国に会社をつくる場合、最も影響が大きい制度です。

免除の基準となる租税負担割合のラインは2本あります租税特別措置法66条の6第5項)。

特定外国関係会社
(ペーパー・カンパニー等)
租税負担割合が 27%以上で会社単位の合算を免除
対象外国関係会社租税負担割合が 20%以上で会社単位の合算を免除

どちらのラインで判定されるかは、経済活動基準の4要件をすべて満たすかどうかで決まります(同条2項3号)。

  • 事業基準 — 株式等の保有、知的財産権の提供、船舶・航空機の貸付けを主たる事業としないこと
  • 実体基準 — 本店所在地国に、事業に必要な事務所・店舗・工場などの固定施設を有すること
  • 管理支配基準 — 本店所在地国において、事業の管理・支配・運営を自ら行っていること
  • 非関連者基準/所在地国基準 — 業種に応じ、主に関連者以外と取引しているか、主に本店所在地国で事業を行っていること

4要件をすべて満たしても、受動的所得については部分合算課税が残ります。部分合算の免除は「租税負担割合 20%以上」「部分適用対象金額が 2,000万円以下」「所得金額に占める割合が 5%以下」のいずれかに該当する場合です(同条10項)。

個人が株主の場合は、持株割合等が10%以上で合算の対象となり、課税対象金額は雑所得の収入金額とみなされます(租税特別措置法40条の4第1項)。

ラブアン法人の税率(事業活動は利益の3%、持株専業は0%)は、上記いずれのラインも下回ります。会社単位の合算を免れるには経済活動基準を満たす必要がありますが、マレーシア側の実体要件(現地スタッフ・年間営業支出)を満たすことと、日本側の経済活動基準を満たすことは別の判定です。どう扱われるかは事業の実態によるため、必ず税理士にご確認ください。

FEFTA

4. 外為法の報告義務

海外への送金や海外法人への出資には、外国為替及び外国貿易法に基づく報告義務があります。「送金の報告」と「投資の報告」は別物で、金額のしきい値も異なります。

海外送金そのもの3,000万円相当額を超える支払等(3,000万円相当額以下は報告不要)
出資比率10%未満の
外国法人の証券取得
1億円相当額を超える場合に報告(1億円相当額以下は報告不要)
対外直接投資
(出資比率10%以上)
10億円相当額以上の場合に報告(10億円相当額に満たないものは報告不要)

提出期限は、取引を行った日または支払等をした日のいずれか遅い日の翌日から起算して20日以内。提出先は財務大臣あて(日本銀行経由)です。

なお事前届出が必要なのは、漁業・皮革または皮革製品の製造業・武器の製造業・武器製造関連設備の製造業・麻薬等の製造業に限られます(外為法23条1項外為令12条)。通常の事業会社をマレーシアに設立する場合、事前届出の対象業種には当たらないのが原則です。

DISCLOSURE

5. 国外財産調書・財産債務調書

国外財産調書その年の12月31日において 5,000万円を超える国外財産を有する居住者(非永住者を除く)。提出期限は翌年6月30日まで
財産債務調書その年分の総所得金額等が 2,000万円を超え、かつ12月31日時点で 3億円以上の財産または 1億円以上の国外転出特例対象財産を有する方。加えて、10億円以上の財産を有する居住者も対象

提出の有無は加算税にも影響します。期限内に提出し、その財産の記載があれば過少申告加算税等が5%軽減され、提出がない場合や記載がない場合は5%加重されます(国外送金等調書法6条)。

CRS

6. 海外の口座情報は日本に共有される

共通報告基準(CRS)により、各国の税務当局は自国の金融機関から非居住者の金融口座情報の報告を受け、租税条約等に基づいて相互に自動交換しています。

報告される情報には、氏名・住所・居住地国・納税者番号に加えて、口座残高および利子・配当等の年間受取総額が含まれます。

国税庁の公表によれば、令和6事務年度に日本は 101か国・地域から日本居住者のCRS情報 約275万件を受領しています。マレーシアは、国税庁が示すCRS情報の交換が可能な国・地域の一覧に掲載されています(令和8年1月1日時点)。

ADMIN

7. 出国時の住民票・健康保険・年金

海外転出届転出をする者はあらかじめ市町村長に届け出る必要があります(住民基本台帳法24条)。転入届と異なり、条文上「○日以内」という日数の定めはありません
国民健康保険被保険者は「都道府県の区域内に住所を有する者」と定められており(国民健康保険法5条)、海外転出により住所を有しなくなれば被保険者ではなくなります
国民年金日本国内に住所を有しなくなると強制加入被保険者ではなくなりますが、日本国籍があれば任意加入できます(国民年金法附則5条1項3号)。手続きは転出前なら市区町村窓口、転出後は最後の住所地の市区町村窓口または年金事務所です

任意加入中は、免除・納付猶予や学生納付特例の申請ができません。また一時帰国などで短期間だけ国内に住所を有した場合でも、その期間は強制加入被保険者となるため手続きが必要です(日本年金機構)。